げいじゅつとしてのたんていしょうせつ
芸術としての探偵小説

冒頭文

捕物作家である私は探偵小説のファンとしての立場から、探偵小説に対する私見を述べてみたいと思う。 探偵小説も芸術である以上——私はそういう前提のもとに話をすすめる——殺人のトリックだけに溺れ、人間性を描くことを忘れ、徒(いたず)らに技巧のみに走ることは探偵小説にとってまことに危険なことと云わねばならない。 私が、今後の探偵小説に望みたいことは次の三点に要約される。 一、

文字遣い

新字新仮名

初出

「別冊宝石」1950(昭和25)年4月

底本

  • 野村胡堂探偵小説全集
  • 作品社
  • 2007(平成19)年4月15日