むらへいく
村へ行く

冒頭文

晴れわたる秋の遠山は、らんじゅくした、女のらたい、ふっくらとした、山肌は、女の、いんこうのごとき、谷をきざむ。ああ、はるかに見る、秋の山山は肉感的なるかな十時五分前太陽はさんらんと放散するのに馬車にへこんだ、村の道を、詩人があるく ×一せいに高い、けやきの枝は、やみ上がりの女のかみのごとく、うすく宙をねらう土蔵の壁の白く明るく。村を吐き出されたひとびとは、絵のごとく、でんぱたにうごく高い空——十時

文字遣い

新字新仮名

初出

「北国新聞」1925(大正14)年11月13日

底本

  • 手と足をもいだ丸太にしてかえし 現代仮名遣い版鶴彬全川柳
  • 邑書林
  • 2007(平成19)年12月16日