ぜにがたへいじとりものひかえ 176 いちばんふだ
銭形平次捕物控 176 一番札

冒頭文

一 「親分、あつしはよく〳〵運が惡いんだね」 ガラツ八の八五郎は、なんがい顎(あご)を撫でながら、つく〴〵斯(こ)んな事をいふのです。そのくせ下がつた眼尻も、天井を向いた鼻も悉(こと〴〵)く樂天的で、たいして悲觀した樣子もありません。 「大層腐(くさ)つてゐるぢやないか。煮賣屋のお勘子(かんこ)が嫁にでも行つたのかえ」 錢形平次はのつけからからかひ面(づら)でした。どんなに芝居がゝりの思ひ入れを

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「西日本新聞」1947(昭和22)年

底本

  • 錢形平次捕物全集第三十八卷 江戸の戀人達
  • 同光社
  • 1955(昭和30)年1月5日