ぜにがたへいじとりものひかえ 318 かたきのむすめ |
| 銭形平次捕物控 318 敵の娘 |
冒頭文
一 「ね、お前さん」 女房のお靜は、いつにもなく、突きつめた顏をして、茶の間に入つて來るのでした。梅二月のある日、南陽(みなみ)が一パイに射す椽側に、平次は日向(ひなた)煙草の煙の棚引く中に、相變らず八五郎と、腹にもたまらない無駄話の一刻(とき)を過して居るのでした。 「恐ろしく眞劍な顏をするぢやないか。また俺の湯呑でも割つたんだらう」 錢形平次は後ろを振り向きもせずに、斯(こ)んなことを言ふの
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「オール讀物」文藝春秋新社、1954(昭和29)年3月号
底本
- 錢形平次捕物全集第三十四卷 江戸の夜光石
- 同光社
- 1954(昭和29)年10月25日