ぜにがたへいじとりものひかえ 230 えんさいでん |
| 銭形平次捕物控 230 艶妻伝 |
冒頭文
一 「親分、あツしもいよ〳〵來年は三十ですね」 錢形平次の子分、愛稱ガラツ八こと八五郎は、つく〴〵こんなことを言つて、深刻な顏をするのでした。 「馬鹿だなア、松が取れたばかりぢやないか。そんなのは年の暮(くれ)に出て來る臺詞(せりふ)だよ」 平次は相變らずの調子で、相手になつてやりながら、この男のトボケた口から、江戸八百八町に起つた——あるひは起りつゝある、もろ〳〵の事件の匂ひを嗅ぎ出すのです。
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「月刊読売別冊」1949(昭和24)年2月
底本
- 錢形平次捕物全集第三十卷 色若衆
- 同光社
- 1954(昭和29)年8月5日