ぜにがたへいじとりものひかえ 210 とぶおんな
銭形平次捕物控 210 飛ぶ女

冒頭文

一 「親分、お早やうございます。今日も暑くなりさうですね」 御馴染(おなじみ)の八五郎、神妙に格子を開けて、見透しの六疊に所在なさの煙草にしてゐる錢形平次に聲を掛けました。 「大層丁寧な口をきくぢやないか。さう改まつて物を申されると、借金取りが來たやうで氣味がよくねえ。矢つ張り八五郎は格子を蹴飛ばして大變をけし込むか、庭木戸の上へ長んがい顎(あご)を載つけなくちや、恰好が付かないね」 平次も充分

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「小説の泉」1949(昭和24)年7月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第三十卷 色若衆
  • 同光社
  • 1954(昭和29)年8月5日