ぜにがたへいじとりものひかえ 221 さらしばはまねく
銭形平次捕物控 221 晒し場は招く

冒頭文

一 「親分、日本橋の騷ぎを御存じですかえ」「知らないよ。晒(さら)し物でもあつたのか、——相對死(あひたいじに)の片割れなんかを、ぼんやり眺めてゐるのは殺生(せつしやう)だぜ」 平次は氣のない顏をして、自分の膝つ小僧を抱いたまゝ、縁側から初秋の淺黄(あさぎ)色の朝空を眺めて居ります。 八月になつて、少し凉風が立ち初めると、人間共も本心を取戻したか、御用はびつくりするほど暇(ひま)。その代り質草

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋新社、1950(昭和25)年9月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第二十八卷 遠眼鏡の殿樣
  • 同光社
  • 1954(昭和29)年6月25日