ぜにがたへいじとりものひかえ 219 かねのおと
銭形平次捕物控 219 鐘の音

冒頭文

一 「親分、近頃江戸にも、變なお宗旨(しうし)があるんですつてね」 ガラツ八の八五郎、何を嗅ぎ出したか、小鼻を膨(ふく)らませて、庭口からノソリと入つて來ました。 五月の末のある朝、明神樣の森も申分なく繁り合つて、平次の家(うち)までが、緑の庭に淀んだやうな日和(ひより)です。庭先に並べた草花の鉢の芽を、後生大事にいつくしんでゐるところへ、この足に眼のない男が木戸を跳ね飛ばすやうに闖入(ちんに

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋新社、1950(昭和25)年7月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第二十八卷 遠眼鏡の殿樣
  • 同光社
  • 1954(昭和29)年6月25日