ぜにがたへいじとりものひかえ 224 いつつのつぼ |
| 銭形平次捕物控 224 五つの壺 |
冒頭文
一 「親分、長い間お世話になりましたが——」 八五郎はいきなり妙なことを言ひ出すのです。まだ火の入らない長火鉢の前、お茶をのんで煙草をふかして、煙草を呑んでお茶を啜(すゝ)つて、五尺八寸の身體が、ニコチンとカフエーンで一杯になつた頃、何やら繼穗(つぎほ)のない話を思ひ出したのでせう。 「大層改まるぢやないか、——まさか長い草鞋(わらぢ)を履(は)くについての挨拶ぢやあるめえな」 平次は大きく欠伸
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「オール讀物」文藝春秋新社、1950(昭和25)年12月号
底本
- 錢形平次捕物全集第二十八卷 遠眼鏡の殿樣
- 同光社
- 1954(昭和29)年6月25日