ぜにがたへいじとりものひかえ 218 しんじゅうくずれ
銭形平次捕物控 218 心中崩れ

冒頭文

一 心中でもしようといふ者にとつて、その晩はまことに申分のない美しい夜でした。 青葉の風が衣袂(いべい)に薫(くん)じて、十三夜の月も泣いてゐるやうな大川端、道がこのまゝあの世とやらに通じてゐるものなら、思ひ合つた二人は、何んのためらひもなく、水の中へでも火の中へでも飛び込み度くなることでせう。 神田鍋町の雜穀問屋、三芳屋彦兵衞の甥(をひ)の音次郎と、同じ店に奉公人のやうに働いて居る、遠

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋新社、1950(昭和25)年6月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第二十七卷 猿蟹合戰
  • 同光社
  • 1954(昭和29)年6月10日