ぜにがたへいじとりものひかえ 217 なげきのゆうたく
銭形平次捕物控 217 歎きの幽沢

冒頭文

一 「親分、世の中には變な野郎があるもんですね」 八五郎は彌造を二つ拵へたまゝ、フラリと庭へ入つて來ました。 朝のうちから眞珠色の霞(かすみ)がこめて、トロトロと眠くなる四月のある日。 「顎(あご)で木戸を開ける野郎だつて、隨分尋常ぢやないぜ」 平次は相變らず貧乏臭い植木の世話を燒き乍ら、氣のない顏を擧げるのでした。 「顎で木戸は開きませんよ」 狹い庭一杯の春の陽の中に、八五郎はキヨトンと

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋新社、1950(昭和25)年5月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第二十七卷 猿蟹合戰
  • 同光社
  • 1954(昭和29)年6月10日