ぜにがたへいじとりものひかえ 216 じゃれんのつぐない
銭形平次捕物控 216 邪恋の償ひ

冒頭文

一 早春のよく晴れた陽を浴びて、植木の世話をしてゐる平次の後ろから、 「親分、逢つてやつて下さいよ。枝からもぎ立ての桃のやうに、銀色のうぶ毛の生えた可愛らしい娘ですがね」 八五郎は拇指(おやゆび)で、蝮(まむし)を拵へて、肩越しに木戸を指すのです。 「何んだ、その桃の實てえのは?」「桃ぢやありませんよ。武家風のお孃さんですよ、——永代橋の欄干(らんかん)に凭(もた)れて、泣き出しさうな恰好を

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋新社、1950(昭和25)年4月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第二十七卷 猿蟹合戰
  • 同光社
  • 1954(昭和29)年6月10日