ぜにがたへいじとりものひかえ 215 めかけのていそう |
| 銭形平次捕物控 215 妾の貞操 |
冒頭文
一 「ウーム」 加賀屋勘兵衞は恐ろしい夢から覺めて、思はず唸(うな)りました。部屋一パイにこめて居るのは、七味唐辛子(たうがらし)をブチ撒(ま)けたやうな、凄い煙で、その煙を劈(つん)ざいて、稻妻の走ると見たのは、雨戸から障子へ燃え移つた焔(ほのほ)です。 「火事だツ」 絶叫した聲は、喉(のど)の中で消えました。眼、鼻、口から入る煙のえぐさは、面(おもて)も擧げられない有樣です。 「親分」 氣
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「オール讀物」文藝春秋新社、1950(昭和25)年3月号
底本
- 錢形平次捕物全集第二十七卷 猿蟹合戰
- 同光社
- 1954(昭和29)年6月10日