ぜにがたへいじとりものひかえ 220 さるかにがっせん |
| 銭形平次捕物控 220 猿蟹合戦 |
冒頭文
一 「日本一の面白い話があるんですが、親分」 ガラツ八の八五郎、こみ上げる笑ひを噛みしめながら、ニヤリニヤリと入つて來るのです。 六月になつたばかり、明神樣の森がからりと晴れて、久し振りの好い天氣。平次は襷(たすき)がけにはたきを持つて、梅雨(つゆ)中閉ぢ込めた家の中の濕氣(しつけ)と埃(ほこり)を、威勢よく掃(は)き出して居りました。 「顏の紐のゆるんだのが、路地を入つて來ると思ふと、それ
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「オール讀物」文藝春秋新社、1950(昭和25)年8月号
底本
- 錢形平次捕物全集第二十七卷 猿蟹合戰
- 同光社
- 1954(昭和29)年6月10日