ぜにがたへいじとりものひかえ 185 あるくしがい
銭形平次捕物控 185 歩く死骸

冒頭文

一 「八、丁度宜いところだ。實は今お前を呼びにやらうかと思つてゐたところよ」「へエ、何んか御馳走でもありますかえ」 錢形平次は、斯んな調子で八五郎を迎へました。この頃の暑さで、江戸の惡者共も大怠業(サボタージユ)をきめて居るらしく、珍らしく御用の方も閑だつたのです。 「呆れた野郎だ。御馳走ならお前を呼ぶものか、一人で喰ふよ」「へエ、御親切なことで」「今のは小言だよ、——昨日(きのふ)向柳原のお前

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋新社、1948(昭和23)年8月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第二十六卷 お長屋碁會
  • 同光社
  • 1954(昭和29)年6月1日