ぜにがたへいじとりものひかえ 128 つきのくま |
| 銭形平次捕物控 128 月の隈 |
冒頭文
一 師走(しはす)に入ると、寒くてよく晴れた天氣が續きました。ろくでもない江戸名物の火事と、物盜り騷ぎが次第に繁くなつて、一日々々心せはしく押し詰つた暮の二十一日の眞夜中。 「おや?」 神田鍋町の呉服屋、翁屋(おきなや)の支配人孫六は、何にか物に脅(おびや)かされるやうに眼を覺しました。土藏の方から、異樣な物音が聽えて來たのです。 土藏の中には、商賣物の呉服太物(ふともの)と、暮の間に問屋
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「オール讀物」文藝春秋社、1941(昭和16)年12月号
底本
- 錢形平次捕物全集第二十五卷 火の呪ひ
- 同光社
- 1954(昭和29)年5月10日