ぜにがたへいじとりものひかえ 129 おきちおゆき
銭形平次捕物控 129 お吉お雪

冒頭文

一 「親分、あれを御存じですかえ」 ガラツ八の八五郎はいきなり飛び込んで來ると、きつかけも脈絡(みやくらく)もなく、こんなことを言ふのでした。 「あ、知つてるとも。八五郎が近頃兩國の水茶屋に入り侵つて、お茶ばかり飮んで腹を下してゐることまで見通しだよ。どうだ驚いたらう」 錢形の平次はこの秘藏の子分が、眼を白黒するのを、面白さうに眺めながら、こんな人の惡いことを言ふのです。 「親分の前だが、それ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1942(昭和17)年1月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第二十五卷 火の呪ひ
  • 同光社
  • 1954(昭和29)年5月10日