ぜにがたへいじとりものひかえ 132 ひなのわかれ
銭形平次捕物控 132 雛の別れ

冒頭文

一 「こいつは可哀想だ」 錢形平次も思はず顏を反けました。ツイ通りすがりに、本郷五丁目の岡崎屋の娘が——一度は若旦那の許嫁と噂されたお萬といふ美しいのが、怪我で死んだと聽いて顏を出しますと、手代の榮吉がつかまへて、死にやうに不審があるから、一應見てくれと、厭應言はさず、平次を現場へ案内したのです。 それは三月の四日、雛祭(ひなまつり)もいよ〳〵昨日で濟んで、女の子にはこの上もなくうら淋しいが、

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1942(昭和17)年4月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第二十五卷 火の呪ひ
  • 同光社
  • 1954(昭和29)年5月10日