ぜにがたへいじとりものひかえ 135 ひののろい
銭形平次捕物控 135 火の呪ひ

冒頭文

一 「親分」「何んだ、八。大層あわててゐるぢやないか」「天下の大事ですぜ、親分」「大きく出やがつたな。大久保彦左衞門樣見たいな分別臭い顏をどこで仕入れて來たんだ」 錢形の平次は驚く色もありません。八五郎のガラツ八と來ては、向柳原の叔母さんが無盡に當つても、隣の荒物屋の猫が五つ子を生んでも、天下の大事扱ひにしかねないあわて者です。 「ね、親分。親分は近頃火事が多過ぎると思ひやしませんか」 ガラツ八

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1942(昭和17)年7月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第二十五卷 火の呪ひ
  • 同光社
  • 1954(昭和29)年5月10日