ぜにがたへいじとりものひかえ 160 ふたつのいれずみ
銭形平次捕物控 160 二つの刺青

冒頭文

一 「親分、大變な者が來ましたよ」 子分の八五郎、ガラツ八といふ綽名(あだな)の方がよく通るあわて者ですが、これでも十手捕繩を預かる、下つ端の御用聞には違ひありません。 「何んだ? 今更借金取なんかに驚く柄(がら)ぢやあるめえ。ズイと通しな」 江戸開府以來と言はれた捕物の名人錢形の平次は、それでもとぐろをほどいて居住ひだけは直しました。まだ三十代に入つたばかり、燻(いぶ)したやうな澁い人柄で、ざ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋新社、1946(昭和21)年10月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第二十五卷 火の呪ひ
  • 同光社
  • 1954(昭和29)年5月10日