ぜにがたへいじとりものひかえ 199 ひづめのあと
銭形平次捕物控 199 蹄の跡

冒頭文

一 「親分、あつしはもう癪(しやく)にさはつて——」 ガラツ八の八五郎は、拳骨(げんこつ)で獅子ツ鼻の頭を撫で乍ら、明神下の平次の家へ飛び込んで來ました。 江戸の町が青葉で綴(つゞ)られて、薫風(くんぷう)と五月(さつき)の陽光が長屋の隅々まで行き渡るある朝のこと、 「八の野郎がまた朝つぱらから癪の種なんか持込んで來やがつたぜ。落着いて飯も食へやしねえ」 平次は大きな箸箱(はしばこ)へ、ガチ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋新社、1949(昭和24)年6月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第二十五卷 火の呪ひ
  • 同光社
  • 1954(昭和29)年5月10日