ぜにがたへいじとりものひかえ 184 おとけいし |
| 銭形平次捕物控 184 御時計師 |
冒頭文
一 「親分、ちよいと智慧を貸して下さい。大變なものが無くなりましたよ」 ガラツ八の八五郎、相變らずのあわてた調子で、錢形平次の家へ飛び込みました。 江戸の夏を飾る年中行事も一わたり濟んで、この上は抹香(まつかう)臭いお盆を待つばかりといふ頃。十日あまり照り續いた往來の土埃(つちほこり)を、少々長刀(なぎなた)になつた麻裏草履に蹴飛ばして、そのまゝ拭き込んだ上がり框(かまち)に飛び上がるのですか
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「オール讀物」文藝春秋新社、1948(昭和23)年7月号
底本
- 錢形平次捕物全集第二十五卷 火の呪ひ
- 同光社
- 1954(昭和29)年5月10日