ぜにがたへいじとりものひかえ 116 おんなのあしあと
銭形平次捕物控 116 女の足跡

冒頭文

一 「親分、近頃は胸のすくやうな捕物はありませんね」 ガラツ八の八五郎は先刻(さつき)から鼻を掘つたり欠伸(あくび)をしたり、煙草を吸つたり全く自分の身體を持て餘した姿でした。 「捕物なんかない方がいゝよ。近頃俺は十手捕繩を返上して、手内職でも始めようかと思つてゐるんだ」 平次は妙に懷疑的でした。江戸一番の捕物の名人と言はれてゐる癖に、時々『人を縛らなければならぬ渡世』に愛想の盡きるほど、弱氣で

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1940(昭和15)年12月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第二十四卷 吹矢の紅
  • 同光社
  • 1954(昭和29)年4月25日