ぜにがたへいじとりものひかえ 117 ゆきのよる |
| 銭形平次捕物控 117 雪の夜 |
冒頭文
一 錢形平次が門口の雪をせつせと拂つてゐると、犬つころのやうに雪を蹴上げて飛んで來たのは、ガラツ八の八五郎でした。 「親分、お早やう」「何んだ、八か。大層あわててゐるぢやないか」「あわてるわけぢやないが、初雪が五寸も積つちや、ヂツとしてゐる氣になりませんよ。雪見と洒落(しやれ)やうぢやありませんか」 さう言ふ八五郎は、頬冠りに薄寒さうな擬(まが)ひ唐棧(たうざん)の袷、尻を高々と端折つて、高い
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「オール讀物」文藝春秋社、1941(昭和16)年1月号
底本
- 錢形平次捕物全集第二十四卷 吹矢の紅
- 同光社
- 1954(昭和29)年4月25日