ぜにがたへいじとりものひかえ 107 うめきちごろし
銭形平次捕物控 107 梅吉殺し

冒頭文

一 「親分、お願ひだ。ちよいとお御輿(みこし)を上げて下さい」 八五郎のガラツ八は額際に平掌(ひらて)を泳がせ乍ら入つて來ました。 「何を拜んでゐるんだ。お御輿は明神樣のお祭りが來なきや上らねえよ」 錢形の平次は驚く色もありません。裏長屋の狹い庭越しに、梅から櫻へ移り行く春の風物を眺めて、唯(たゞ)斯(か)うぼんやりと日を暮してゐる、この頃の平次だつたのです。 「三河町の殺しの現場へ行つて見ま

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1940(昭和15)年3月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第二十三卷 刑場の花嫁
  • 同光社
  • 1954(昭和29)年4月5日