ぜにがたへいじとりものひかえ 102 きんぞうのゆくえ
銭形平次捕物控 102 金蔵の行方

冒頭文

一 「へツ、へツ、可笑(をか)しなことがありますよ、親分」「何が可笑しいんだ。いきなり人の面を見て、馬鹿笑ひなんかしやがつて、顏へ墨でもついてゐると言ふのかい」 錢形平次は、ツルリと顏を撫(な)でました。三十を越したばかり、まだなか〳〵良い男振りです。 「氣が短いなア、そんな人の惡い話ぢやありませんよ、へツ、へツ」 ガラツ八の八五郎は、まだ思ひ出し笑ひが止りません。馬のやうな大きな齒を剥(む)き

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1939(昭和14)年10月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第二十三卷 刑場の花嫁
  • 同光社
  • 1954(昭和29)年4月5日