ぜにがたへいじとりものひかえ 121 つちへのあいちゃく |
銭形平次捕物控 121 土への愛著 |
冒頭文
一 「親分、良い陽氣ぢやありませんか。少し出かけて見ちやどうです」 ガラツ八の八五郎が木戸の外から風の惡い古金買ひのやうな恰好で、斯う覗いてゐるのでした。 「何んだ八か。そんなところから顎(あご)なんか突き出さずに、表から廻つて入つて來い」 錢形平次は、來客と對談中の身體を捻(ひね)つて、大きく手招ぎました。 「顎——ですかね、へツ、へツ」 ガラツ八は首を引込め
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「オール讀物」文藝春秋社、1941(昭和16)年5月号
底本
- 錢形平次捕物全集第二十二卷 美少年國
- 同光社
- 1954(昭和29)年3月25日