ぜにがたへいじとりものひかえ 004 のろいのぎんかんざし
銭形平次捕物控 004 呪ひの銀簪

冒頭文

一 「永い間斯んな稼業(かげふ)をして居るが、變死人を見るのはつく〴〵厭だな」 捕物の名人錢形の平次は、口癖(くちぐせ)のやうにかう言つて居りました。血みどろの死體をいぢり廻すのを商賣冥利と考へる爲には、平次の神經は少し繊細に過ぎたのです。 それが一番凄慘な死體と逃れやうもなく顏を合せることになつたのですから、全くやりきれません。 「ガラツ八、手前は大變なところへ、俺を

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1931(昭和6)年7月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第二十二卷 美少年國
  • 同光社
  • 1954(昭和29)年3月25日