ぜにがたへいじとりものひかえ 113 ほくめいのさかな
銭形平次捕物控 113 北冥の魚

冒頭文

一 「江戸中の評判なんですがね、親分」 「何が評判なんだ」 ガラツ八の八五郎が、何にか變なことを聞込んで來たらしいのを、錢形の平次は浮世草紙(うきよざうし)の繪を眺め乍ら、無關心な態度で訊き返しました。 「兩國の女角力(をんなずまふ)と錢形の親分」 「馬鹿野郎、俺を遊ぶ心算(つもり)か」 平次は威勢の良いのを浴びせて、コロリと横になります。斯(か)うすると軒に這はせた、

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1940(昭和15)年9月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第二十二卷 美少年國
  • 同光社
  • 1954(昭和29)年3月25日