ぜにがたへいじとりものひかえ 305 うつくしきえもの
銭形平次捕物控 305 美しき獲物

冒頭文

一 「親分、ちよいと江戸をあけますがね」 八五郎はいきなりこんなことを言つて來たのです。彼岸(ひがん)を過ぎたばかり、秋の行樂の旅にはまだ早過ぎますが、海道筋は新凉を追つて驛馬の鈴の音も、日毎に繁(しげ)くなる頃です。 「江戸をあける?——大層なこと言やがるぢやないか、日光へ御代參にでも出かけるのか、それとも——」 錢形平次は滅法忙しいくせに、相變らず暇で〳〵仕樣がないやうな顏でした。空茶(から

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋新社、1953(昭和28)年10月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第二十一卷 闇に飛ぶ箭
  • 同光社
  • 1954(昭和29)年2月15日