ぜにがたへいじとりものひかえ 310 やみにとぶや
銭形平次捕物控 310 闇に飛ぶ箭

冒頭文

凉み舟 一 「大層な人ですね、親分」 兩國橋の上、ガラツ八の八五郎は、人波に押されながら、欄干(らんかん)で顎(あご)を撫でてをります。 「まア、少し歩けよ。橋を越せば、一杯呑む寸法になつてゐるんだ」 錢形平次は、泳ぐやうに近づいて、八五郎の袖を引きます。 引つ切りなしに揚がる花火、五彩(さい)の火花が水を染めて、『玉屋ア、鍵屋ア』といふお定まりの褒め言葉が、川面(づら)を壓し、橋を搖るが

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「報知新聞」1953(昭和28)年7月

底本

  • 錢形平次捕物全集第二十一卷 闇に飛ぶ箭
  • 同光社
  • 1954(昭和29)年2月15日