ぜにがたへいじとりものひかえ 300 けいずのいれずみ
銭形平次捕物控 300 系図の刺青

冒頭文

一 「親分は源氏(げんじ)ですか、それとも平家ですか」 ガラツ八の八五郎は、いきなりそんなことを言ふのです。御用も一段落になつた春のある日、後ろに一立齋(りふさい)廣重(ひろしげ)がよく描いた、桃色の空を眺めて、一本の煙管をあつちへやつたり、此方へ取つたり、結構な半日を、百にもならぬ無駄話に暮らすのです。 「螢(ほたる)や蟹(かに)ぢやあるめえし、源氏だらうと平家だらうと一向構はないぢやないか」

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋新社、1953(昭和28)年5月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第二十一卷 闇に飛ぶ箭
  • 同光社
  • 1954(昭和29)年2月15日