ぜにがたへいじとりものひかえ 302 さんげんながや
銭形平次捕物控 302 三軒長屋

冒頭文

一 「親分、良いお天氣ですね——これで金さへありや——」 薫風(くんぷう)に懷ろを膨(ふく)らませて、八五郎はフラリと入つて來ました。相變らず寢起の良ささうなのんびりした顏です。 「お早う、天氣が續くと、懷ろの方も空つ尻らしいな」「お察しの通り、四五日はお濕(しめ)りにもありつきませんよ。いよ〳〵料簡を入れ替へて——」「まさか、泥棒を働く氣になつたわけぢやあるまいな」「それは大丈夫で。泥棒なら縛

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋新社、1953(昭和28)年7月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第二十一卷 闇に飛ぶ箭
  • 同光社
  • 1954(昭和29)年2月15日