ぜにがたへいじとりものひかえ 303 むすめのまもりぶくろ
銭形平次捕物控 303 娘の守袋

冒頭文

一 「親分、あつしのところへ、居候が來ましたよ」 八五郎がまた、妙な報告を持つて來ました。六月のある朝、無風の薄曇り、今日もまた、うんと暑くなりさうな日和(ひより)です。 「良い年をしてみつともない。何處へ居候に行くんだ」 單衣(ひとへ)の尻を端折つて、三文朝顏の世話を燒き乍ら、平次は氣のない返事をして居ります。素足に冷たい土の感觸、こいつはまた、滅法良い心持です。 「あつしが居候に行くんぢや

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋新社、1953(昭和28)年8月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第二十一卷 闇に飛ぶ箭
  • 同光社
  • 1954(昭和29)年2月15日