ぜにがたへいじとりものひかえ 174 まげきり
銭形平次捕物控 174 髷切り

冒頭文

一 「あれを聽いたでせうね、親分」 ガラツ八の八五郎は、この薄寒い日に、鼻の頭に汗を掻いて飛込んで來たのです。 「聽いたよ、新造に達引(たてひ)かしちやよくねえな。二三日前瀧ノ川の紅葉(もみぢ)を見に行つて、財布を掏(す)られて、伴(つれ)の女達にお茶屋の拂ひまでして貰つたといふ話だらう」 錢形平次は立て續けに煙管を叩いて、ニヤリニヤリとして居るのです。 「そんなつまらねえ話ぢやありませんよ。

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋新社、1947(昭和22)年12月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第二十卷 狐の嫁入
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年11月15日