ぜにがたへいじとりものひかえ 179 おとよのこいびと
銭形平次捕物控 179 お登世の恋人

冒頭文

一 「親分妙なことがありますよ」 ガラツ八の八五郎は、入つて來るといきなり洒落(しやれ)た懷中煙草入を出して、良い匂ひの煙草を立て續けに二三服喫ひ續けるのでした。 「陽氣のせゐだね。俺の方にも妙なことがあるんだが——」 錢形の平次は、肘枕(ひぢまくら)を解くと、起直つてたしなみの襟などを掻き合せます。 「へエー、不思議ですね。親分の方の妙な事といふのはなんで?」 ガラツ八は鼻の下を長くしました

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋新社、1947(昭和22)年10月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第二十卷 狐の嫁入
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年11月15日