ぜにがたへいじとりものひかえ 110 じゅうまんりょうのゆくえ
銭形平次捕物控 110 十万両の行方

冒頭文

一 「親分、飯田町の上總屋(かづさや)が死んださうですね」 ガラツ八の八五郎は、またニユースを一つ嗅ぎ出して來ました。江戸の町々がすつかり青葉に綴(つゞ)られて、時鳥(ほとゝぎす)と初鰹(はつがつを)が江戸ツ子の詩情と味覺をそゝる頃のことです。 「上總屋が死んだところで俺の知つたことぢやないよ」 錢形平次は丹精甲斐もない朝顏の苗(なへ)を鉢に上げて、八五郎の話には身が入りさうもありません。 「

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1940(昭和15)年6月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第二十卷 狐の嫁入
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年11月15日