ぜにがたへいじとりものひかえ 112 きつねのよめいり
銭形平次捕物控 112 狐の嫁入

冒頭文

一 「親分、面白い話があるんだが——」 ガラツ八の八五郎は、木戸を開けて、長んがい顏をバアと出しました。 「あ、驚いた。俺は糸瓜(へちま)が物を言つたかと思つたよ。いきなり長い顏なんか出しやがつて」 錢形平次は大尻端折の植木の世話を燒く恰好で、さして驚いた樣子もなく、こんな馬鹿なことを言ふのです。それが一の子分ガラツ八に對する、何よりの好意であり、最上等の歡迎の辭(じ)であることは、ガラツ八自身

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1940(昭和15)年8月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第二十卷 狐の嫁入
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年11月15日