ぜにがたへいじとりものひかえ 170 むかでやごろし
銭形平次捕物控 170 百足屋殺し

冒頭文

一 「親分、お早やうございます。——お玉ヶ池の邊に、妙な泥棒がはやるさうですね」 ガラツ八の八五郎は、朝の挨拶と一緒に、斯(か)うニユースを持つて來るのが、長い間の習慣(しふくわん)でした。錢形平次に取つては、まことに結構な順風耳ですが、その代りモノになるのはほんの十に一つで、あとは大抵愚(ぐ)にもつかぬ、市井(しせい)の噂話に過ぎなかつたのです。 「妙な泥棒は苦手だよ。此間もうちの三毛猫を盜ん

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋新社、1947(昭和22)年7月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第十九卷 神隱し
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年11月5日