ぜにがたへいじとりものひかえ 161 さかやちゅうぼく
銭形平次捕物控 161 酒屋忠僕

冒頭文

一 「親分、平右衞門町の忠義酒屋といふのを御存じですかえ」「名前は聞いて居るが、店は知らないよ」 ガラツ八の八五郎は何んかまた事件を嗅ぎ出して來た樣子です。大きな小鼻をふくらませて、懷ろから出した掌(て)で、長んがい顎(あご)を撫で廻し乍ら、斯(こ)んな調子で始めるのでした。 薄寒い日射しが障子に這ひ上がつて、街にはもう暮近い賑やかさが脉打つてゐやうといふ或日の出來事です。 「孝行や忠義はこ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋新社、1946(昭和21)年12月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第十九卷 神隱し
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年11月5日