ぜにがたへいじとりものひかえ 172 かみかくし |
| 銭形平次捕物控 172 神隠し |
冒頭文
一 「親分は長い間に隨分多勢の惡者を手掛けたわけですが、その中で何んとしても勘辨ならねエといつた奴があるでせうね」 ガラツ八の八五郎は妙なことを訊ねました。 晩秋のある日、神田の裏長屋の上にも、赤蜻蛉(あかとんぼ)がスイスイと飛んで、凉しい風が、素袷(すあはせ)の襟から袖から、何んとも言へない爽快(さうくわい)さを吹き入れます。 「それはある」 平次は煙管を指の先で廻し乍ら、あれか、これかと
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「オール讀物」文藝春秋新社、1946(昭和21)年11月号
底本
- 錢形平次捕物全集第十九卷 神隱し
- 同光社磯部書房
- 1953(昭和28)年11月5日