ぜにがたへいじとりものひかえ 180 わな
銭形平次捕物控 180 罠

冒頭文

一 「こいつは驚くぜ、親分」 ガラツ八の八五郎は、相變らず素頓狂(すつとんきやう)な聲を出し乍ら飛込んで來ました。急に春らしくなつて、櫻の蕾(つぼみ)がふくらみさうなある日の午(ひる)頃のことです。 「驚くよ、八五郎が馬を曳いて來たつて、暮れ以來お手許不如意(ふによい)で、兩と纒(まと)まつた金はあるめえよ、なアお靜」 平次はお勝手で水仕事をしてゐる女房に聲を掛けました。 「馬なんか曳いちや來

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋新社、1948(昭和23)年3月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第十九卷 神隱し
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年11月5日