ぜにがたへいじとりものひかえ 156 はっせんりょういへん
銭形平次捕物控 156 八千両異変

冒頭文

一 「親分」 ガラツ八の八五郎が、泳ぐやうに飛込んで來たのは、江戸中の櫻が一ぺんに咲き揃つたやうな、生暖かくも麗(うら)らかな或日の朝のことでした。 「なんだ八、大層あわててゐるぢやないか」 錢形平次は朝飯の箸を置くと、大して驚く樣子もなく、煙管(きせる)を取上げて、粉煙草をせゝります。 「落ついて居ちやいけませんよ。釜屋で又殺しがあつたんで」「釜屋?」「北新堀の釜屋、——ツイ十日ばかり前に主

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「文藝讀物」文藝春秋社、1944(昭和19)年4月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第十八卷 彦徳の面
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年10月20日