ぜにがたへいじとりものひかえ 154 たこのきけい |
| 銭形平次捕物控 154 凧の詭計 |
冒頭文
一 「親分、旅をしませんか、良い陽氣ですぜ」 ガラツ八の八五郎はまた斯(こ)んな途方もないことを持込んで來たのです。梅の花はもう梢(こずゑ)に黄色くなつてゐるのに、今年の二月は妙に薄寒くて、その日も行火(あんくわ)の欲しいやうな曇つた日でした。 「旅? 又なんか嗅ぎ出したんだらう。物見遊山には早いし、後生氣(ごしやうぎ)や金儲けで草鞋(わらぢ)をはく柄(がら)ぢやなし」 錢形平次は煙管を投り出し
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「文藝讀物」文藝春秋社、1944(昭和19)年2月号
底本
- 錢形平次捕物全集第十八卷 彦徳の面
- 同光社磯部書房
- 1953(昭和28)年10月20日