ぜにがたへいじとりものひかえ 155 ぶつぞうのひざ
銭形平次捕物控 155 仏像の膝

冒頭文

一 「親分、怖(こは)い話があるんだが——」 ガラツ八の八五郎が、息を切らして飛込みました。櫻の莟(つぼみ)もふくらんだ、ある麗(うらゝ)かな春の日の晝少し前のこと——。 「脅(おど)かすなよ。いきなり、飛込んで來やがつて」 錢形平次は鎌首(かまくび)をもたげました。相變らず日向に不景氣な植木鉢を竝べて、物の芽(め)をなつかしんでゐたのです。 「鐵砲ですぜ、親分」 八五郎は餘つ程急いで來たらし

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「文藝讀物」文藝春秋社、1944(昭和19)年3月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第十八卷 彦徳の面
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年10月20日