ぜにがたへいじとりものひかえ 150 やりのおれ
銭形平次捕物控 150 槍の折れ

冒頭文

一 「八、何處の歸りだ。朝つぱらから、大層遠走りした樣子ぢやないか」 錢形の平次は斯んな調子でガラツ八の八五郎を迎へました。 「わかりますかえ親分、向柳原の叔母の家から來たのぢやないつてことが」 八五郎の鼻はキナ臭く蠢(うご)めきます。 「まだ巳刻(よつ)前だよ、良い兄さんが髷節(まげぶし)に埃(ほこ)りを附けて歩く時刻ぢやないよ。それに氣組が大變ぢやないか。叔母さんとこの味噌汁(みそしる)や

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「文藝讀物」文藝春秋社、1943(昭和18)年11月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第十八卷 彦徳の面
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年10月20日