ぜにがたへいじとりものひかえ 163 とざされたにわ
銭形平次捕物控 163 閉された庭

冒頭文

一 江戸開府以來の捕物の名人と言はれた錢形の平次は、春の陽が一杯に這ひ寄る貧しい六疊に寢そべつたまゝ、紛煙草をせゝつて遠音(とほね)の鶯(うぐひす)に耳をすまして居りました。 此上もなく天下泰平の姿ですが激しい活動のあひ間〳〵に、こんな閑寂な境地を樂しむのが、平次の流儀でもあつたのです。 「八、何をして居るんだ。用事があるなら大玄關から入れ」 いきなり平次は振り返りもせずに、後ろの方——さ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「東北文庫」1946(昭和21)年

底本

  • 錢形平次捕物全集第十八卷 彦徳の面
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年10月20日