ぜにがたへいじとりものひかえ 153 こうじんぼうき
銭形平次捕物控 153 荒神箒

冒頭文

一 「錢形平次親分といふのはお前樣かね」 中年輩(ちうねんぱい)の駄馬に布子(ぬのこ)を着せたやうな百姓男が、平次の家の門口にノツソリと立ちました。 老(ふ)けてゐるのはその澁紙(しぶがみ)色に焦(や)けた皮膚のせゐで、實は三十五六をあまり越してゐないかもわかりません。油氣のない髮を藁(わら)しべで結つて、月代(さかやき)は伸び放題、從つて熊の子のやうな凄まじい髯面ですが、微笑すると眼尻に皺が

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「文藝讀物」文藝春秋社、1944(昭和19)年1月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第十八卷 彦徳の面
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年10月20日