ぜにがたへいじとりものひかえ 140 いつつのいのち
銭形平次捕物控 140 五つの命

冒頭文

一 「親分、變なことがあるんだが——」 ガラツ八の八五郎がキナ臭い顏を持ち込んだのは、まだ屠蘇(とそ)機嫌のぬけ切らぬ、正月六日のことでした。 「何が變なんだ、松の内から借金取でも飛込んだといふのかえ」 錢形の平次は珍らしく威勢よく迎へました。ろくな御用始めもないので、粉煙草ばかりせゝつて、心待ちに八五郎の來るのを待つてゐたのです。 「借金取や唐土(たうど)の鳥には驚かねえが、——こいつは全く

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1943(昭和18)年1月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第十七卷 權八の罪
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年10月10日