ぜにがたへいじとりものひかえ 139 ちちのいしょ
銭形平次捕物控 139 父の遺書

冒頭文

一 「お早よう」 ガラツ八の八五郎は、尋常な挨拶をして、愼(つゝし)み深く入つて來ると、お靜のくんで出した温い茶を、お藥湯のやうに押し戴いて、二た口三口啜(すゝ)り乍ら、上眼づかひに四邊を見廻すのでした。 「どうした八、大層御行儀が良いやうだが、何んか變つたことでもあつたのかい」 錢形平次は縁側に寢そべつたまゝ、冬の日向(ひなた)を樂んで居りましたが、ガラツ八の尤(もつと)もらしい顏を見ると、惡

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1942(昭和17)年12月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第十七卷 權八の罪
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年10月10日